大手銀行系のお得なクレジットカードブログ:2019-6-22
わしは、農家の三女として生まれた。
親はさぞかし男の子を期待していたことだろう。
農家の嫁でありながら、男の子を産めなかったママ。
わしが、もし男だったなら、
ママにはもう少し明るい人生があったかもしれない…
物心ついた頃から、わしは祖母のそばにいた。
祖母はいつもママの悪口を言っていた。
幼い頃から聞かされていたので、わしもママがきらいだった。
汚い、臭い、気がきかない…そういった言葉だった。
わしが小学生の時、学校からの帰り道、
今にも大雨が降り出しそうな午後だった。
遠くに人影が見えた時、嫌な予感がした。
だんだん近づいて来る…
やはりママだった。
「わあい、お母さんだ」
喜んでかけ寄り、かさを受け取る…
それが普通のお子様の姿だろう。
「はい、かさ!」
わしは、無言でママからかさを受け取った。
ママは、お姉さんたちのかさも用意していて
わしとは反対の方向の学校へ向かっていった。
そのことがわしにはせめてもの救いだった。
ママと並んで歩いて帰るなど、ぜったいに嫌だったのだ。
「今の人、お母さん?」
友人が聞く。
「うん」
わしは、それ以上何も言いたくなかった。
もんぺ姿のママを友人に見られたことが、
ずっしりと重くのしかかっていた。
ママはいつももんぺをはいて、汚ない格好をしていた。
ママはおしゃれな服など一枚も持っていなかった。
服を買うためのお金がないことも、
わしはお子様ながらに知っていた。
わしが目覚めた時、ママはすでにもんぺ姿である。
わしが眠りにつく時、ママはまだもんぺ姿である。
もしかしたら、寝る時も、
もんぺをはいているのではないかと疑ったこともある。
ママのもんぺは、赤い模様があったが、
色あせて疲れているようだった。